ここはクリスマスツリーの森と言われています。もみの木がたくさん生えているからでも、クリスマスツリー用の木を植えているからではありません。ここの森に住む動物たちが、あるときから冬になると木に飾りをつけるようになったのです。そんな様子を見た人々がクリスマスツリーの森と呼ぶようになりました。動物たちはどんな思いを込めて飾りをつけたのでしょう。一度お話を聞いてみたいものです。
1. 輝く星
人里から少し離れたところに静かな暗い森がありました。
冷たい空気が漂う中、そこで暮らす動物たちはとてもひっそりと暮らしていました。
ある一本の木にはリスの親子が住んでいました。リスのお母さんは初めての子育てに大忙しで、一日一日が何事もなく過ぎてくれさえそれでいいと思うようになっていました。そんなある冬の日、貯めておいた食べ物が底をつきそうになったリスのお母さんは街に何か食べ物がないか探しに行くことにしました。人間に見つからないように夜に街へ行くと、人間の家の窓からキラキラと輝く星が見えました。大きな木の上に乗っかっていたその星は、リスが今まで見た中で一番大きく輝いて見えました。
(こんな素敵なものを子供達にも見せたいな。)
と思いながら、リスのお母さんは街の中にあるきのこや木の実を集めると足早に森へと帰りました。
それから時間が過ぎ、森は一段と冷たくなった空気が流れていました。
リスのお母さんは相変わらず忙しく暮らしていましたが、子供達は元気に成長しました。元気いっぱいの子供達には少し静かな森は退屈そうで、リスのお母さんは子供達が楽しめることは何かと考えていました。でも、静かな森には楽しむためのおもちゃも絵本もありません。考えに考えた末に、街で見た大きな星のことを思い出しました。
リスのお母さんは木の枝で大きな星を作りました。みんなが元気に育ってくれた感謝を込めながら、ひと彫りひと彫り丁寧に作りました。
そして、大きな満月の夜にリスの家がある木のてっぺんに、星を飾り付けました。
星は、月の光に照らされて、そんな星よりも優しく淡く輝いて見えました。リスの子供達はこの星を見ると大喜びで見惚れていました。暖かく優しい光に誘われて森に住む動物たちもたくさんやってきました。森は優しく温かい空気に包まれると、みんなで賑やかにその夜を過ごしました。
やがてリスのお母さんが思いを込めて彫った木彫りの飾りのことが森の動物たちに広がり、それからずっと冬の一番寒い日になると、動物たちは感謝を込めて森の木々に木彫りの飾りを飾り付けるようになりました。