845 (hashigo)/制作ユニット

hashigo

woodwork/illustration/automata/story

Works

瓶詰め屋

1. 主人を探す風船

2. 雲集め


瓶詰め屋
何処にでもありそうな、ごく普通の町には沢山の店が連なったところがあった。パン屋にソーセージ屋、チョコレートが美味しいお菓子屋や店主が気に入った少し変わった本を置いている本屋。少しこだわりの強いところがある店が多かったが、素敵なお店が並んでいた。ただ一軒だけやけに物静かな店があった。

そこは赤い屋根に赤い旗があがっているが、開いているのかどうかわからないくらいひっそりとした小さな看板のある店だった。看板にはこう書いてあった。
“お好きなものを御詰め致します。何なりとどうぞ”

この店に頼むとどんなものでも瓶に詰めてくれるという、不思議な店だった。そのためか、特別流行っているということはない。ただ、ここには何か困っているのか、はたまた慌てているのか、なんともいえない風変わりなお客ばかり訪れるのだった。

1. 主人を探す風船
    主人を探す風船前の日はとても風の強い日だった。街の沢山のモノが風に乗って旅に出て行き、中には行き場を 失い迷子になるモノもあった。そんな日に、ひとりの大柄な男が風船を手に店にやって来た。少し疑い深そうにしている男はこう尋ねた。「本当に何でも詰めてくれるんですか?」 言葉少なに店主は、こくりと頷いた。すると男は恥ずかしそうに持っていた風船を差し出した。木に引っかかっていた風船がどこか寂しげで、目印を付けて主人を探していたので連れて来たのだった。店主は 「かしこまりました。」 というと、店の裏へと入っていった。少しの時間が過ぎて、店主が瓶に詰めた風船を片手にやって来た。 「こちらでよろしいでしょうか?」 と手渡そうとすると、男は受け取らなかった。 「私が持っているよりも、この店に置いていただくことはできないでしょうか?その方が主人が見つかると思って。」 少し考えた店主だったが、男の申し出を受けることにした。 一日が過ぎ、二日が過ぎ、二週間が過ぎた辺りだっただろうか。嬉しそうに男の子が店に入って来た。風船はようやっと主人に会うことができたのだった。それから何ヶ月かたったある日、また男がやって来た。主人を探している風船を手にして。 瓶詰め屋/主人を探す風船
2. 雲集め
    毎日生まれては流され、消えてゆく雲。そんな雲が大好きで、毎日毎日眺めている女の子がいた。朝起きてから日が暮れるまで女の子のすることは決まっていた。同じ椅子に座り、じっと空を見つめる。雲を眺めてお気に入りの雲を見つける。しかし、その雲は流れていきいずれは消えていく。そしてまた、新しいお気に入りを見つける為に空を見上げているのだった。そんな女の子には夢があった。いつかこの雲を集めてみたい、そう思っていた。   瓶詰め屋/雲集め   お気に入りの雲はそうそう簡単に見つけられるものではなかった。お気に入りは、そっと頭に残していたある日のこと。お母さんが女の子に「素敵な場所に連れて行ってあげるから、支度をしなさいな」と言った。向かった場所はいつもの様に静まりかえった瓶詰め屋だった。少し違和感のある店の雰囲気に女の子は少し不安を感じながら、お母さんの後について店に入った。すると、にっこりと微笑み店主が店の裏から数本の瓶詰めを運んで来た。それをみて、女の子は驚いた。忘れもしない今まで見て来たお気に入りの雲達が瓶の中にあった。         「これ、どうしたの?」うれしそうに聞いた。 毎日女の子を見ていたお母さんが、店主に頼んでお気に入りの雲を瓶詰めにして集めていたのだ。お母さんはやさしく微笑んだ。 「お誕生日おめでとう。」 それは女の子の誕生日プレゼントだった。 最高のプレゼントに女の子はそれはそれは喜ん だ。その日の出来事はすべて彼女の宝物となった。