845 (hashigo)/制作ユニット
Works

ステキなみつけもの

1. 1月

2. 2月

3. 3月

4. 4月

5. 5月

6. 6月

8. 8月

9. 9月

10. 10月

11. 11月

12. 12月


まだ寒い冬の日。
へびくんが、もぐらくんのために面白いものを土の中に持ってきました。
それは、大きな四角い紙にたくさんの絵が描かれたものでした。
めずらしかったので、2ひきは夢中になって見ていました。

「外の世界には、面白いものがいっぱいあるんだね。」
と、もぐらくんが言いました。
「そうとも。外の世界には、不思議なものであふれているんだよ。そうだ。もぐらくんのために、ぼくが見つけてきてあげるよ。 」
と、へびくんはもぐらくんに約束しました。

1. 1月
まだまだ寒い冬はつづいています。へびくんは、住みかにあった小さな絵をもぐらくんに持ってきました。 「空には、こんなものが浮かんでいるのか。」 外の世界の不思議なものが気になって、2ひきは暖かくなるのをまだかまだかと待っています。
2. 2月
すこしすると、暖かくなり外に出られる日が増えてきました。 「もぐらくんが見たかったもの、みつけたよ。」 へびくんが、もぐらくんに風船をみつけて持ってきてくれました。 「こんな風にプカプカと浮いていたんだね。ひもを手放したらどうなるの?」ともぐらくんが言うと、へびくんはひもを手放してみました。 すると、風船は風にのって、どこか遠くへ消えていってしまいました。 「どうやら、ここにはいたくなかったみたいだね」と、悲しそうにもぐらくんがいうと 「そんなことないさ、なにか忘れ物をとりにいっただけさ。」とへびくんはもぐらくんを元気付けました。
3. 3月
風船はなかなか帰ってきてはくれませんでした。悲しそうなもぐらくんが喜ぶものはないかとへびくんは、いろいろと歩き回っていました。 「わぁ、いいにおい。きれいな花が咲いている。」 へびくんは、もぐらくんに花を持っていってあげることにしました。
4. 4月
「もぐらくん、いいにおいでしょ?」と花をもったへびくんが、もぐらくんの穴に話しかけるとひょこっと顔をだしました。 「なんていい匂いなんだ。それ、きれいな色をしているね。」ともぐらくんの顔が、久しぶりに明るくなりました。 花の匂いにさそわれて、ちょうちょもたくさんやってきました。 「暖かいし、にぎやかだし。春は本当に楽しいね。」もぐらくんが元気を取り戻して、へびくんも嬉しくなりました。
5. 5月
暖かくゆったりとした時間が流れていると、 「なんだか、楽しそうだね。」と鳥たちもやってきました。 陽気な鳥たちは、自慢の歌を聴かせてくれました。 「どうだい?みんなで歌おうじゃないか。」と鳥たちが言うと 「でも、僕らはうたったことがないんだ。どうやってうたうんだい?」とへびくんが言いました。 「簡単なことさ。ピロピロピピーッといえばいいのさ。」鳥たちは歌い方を教えてくれましたが、2ひきはうまくいきませんでした。 でも、なんとか真似をして「ピロピロピピーッ。」うまく歌えなくても、歌ってみるとたのしいものでした。 みんなで楽しく過ごしたにぎやかな時間は、春をお祝いしているようでした。  
6. 6月
春はあっという間に過ぎ生き物たちにとって過ごしやすい日がくると、へびくんは楽しいものはないかと探しまわる日が続きました。 「おー、なんだか大きなものが落ちているぞ。」誰かが忘れていったのでしょうか。へびくんは大きな本をみつけました。 「これは、もぐらくんが気にいるに違いない」ともぐらくんのところにくると、大きな雨つぶが降ってきました。 もぐらくんは大慌てで穴にもぐってしまいました。 「この中にいれば、濡れないよ。」とへびくんが本を広げると、もぐらくんは穴から顔をだしました。 すると、雨にこまったちょうちょや鳥も本の中へやってきて、一緒に雨の様子をみることにしました。 ぴちゃん、ぴちゃん。いつもは雨になると穴の中にはいらなくてはいけないもぐらくんにとって、こんなにぎやかな雨ははじめてでした。 「雨の日は、こんなにも楽しい日だったんだね。」もぐらくんは、本をもってきてくれたへびくんに感謝しました。 その日からしばらく雨の日は続き、へびくんともぐらくんは一緒に雨の音を静かに聴きながら楽しみました。
8. 8月
「新しいお友達をつれてきたよ。」とへびくんがバケツに、黄色い魚をいれて連れてきました。 初めてみる生き物にもぐらくんは驚きました。なんだって水の中にはいっているのですから。 もぐらくんは「お水の中が好きなの?僕は水の中では苦しくて、生きられないんだ。」と言うと 黄色い魚は「そうよ、お水が大好きなの。だからお水に住んでいるのよ。あなたは土の中が好きなの?」と言いました。 「土の中は安全で好きだけど、最近大好きではないんだ。穴の外の世界は面白いものがたくさんあってとても羨ましく思っているよ。」ともぐらくんは答えました。 「そうよね。私も色々なところを見るのが好きよ。でもやっぱり一番居心地のよいお水の中が一番ね。」黄色い魚がこう言うと、 もぐらくんは「たしかにそうだな。居心地は土の中が一番いいや。」と思いました。 黄色い魚の水のお話は、もぐらくんにとってとても珍しいものでした。もぐらくんがお返しに当たり前に感じていた土の中のことを話すと、意外なことに黄色い魚はとても面白がってくれました。 もぐらくんは、自分にとって面白みもない話でも楽しんでもらえたことが不思議で、なによりとても嬉しかったのでした。  
9. 9月
「そろそろ帰らなくちゃ。」黄色い魚がそういうと、へびくんは黄色い魚を家まで送っていきました。 楽しい時間はあっという間にすぎるもので、辺りはすっかり暗くなっていました。 「また遊ぼうね。」と黄色い魚と別れると、近くの水たまりにきらきらのお月様をみつけました。 「いつもは空にあるのに、すぐ触れるような場所にあるなんて。」 へびくんは、もぐらくんに見せてあげたくて、捕まえようとしましたが、 「あれ?ぜんぜんつかめないな。」すぐに形が崩れて触ることさえできません。何度も何度も挑戦しましたが、お月様は捕まえることができませんでした。 「あぁ、あぁ。お月様ってきむずかしいんだな。」と諦めて帰ることにしました。
10. 10月
次の日、きらきらなお月様は捕まえられなかったことが心残りで、へびくんは黄色くて大きなものが気になりました。 「お、黄色くて大きなもの、みいつけた。」へびくんは、畑にあったかぼちゃをもぐらくんに持って行きました。 頭にのっけると王冠みたい。とても偉い人になった気分になれそうでした。 でも、もぐらくんはなぜか怖がっているようでした。 「あれれ。うしろになにかいるみたいだよ?」と怯えるような声で、もぐらくんが言いました。 「もぐらくんこそ、うしろになにかいるみたいだよ。」とへびくんも、怯えるような声で言いました。 2ひきは同時に振り返りましたが、なにも見えませんでした。不思議な出来事に2ひきは苦笑い。 その日は、早めに家に帰ることにしました。
11. 11月
しばらくすると、冷たい風が吹きました。そろそろ次の冬がやってきそうです。 森も草木もだんだんと静かになっていきました。 へびくんは、そんな時こそ少しでも楽しく過ごそうと、森から木の実をたくさん持ってきて、 もぐらくんと鼻の頭にのせたり、投げ合ったりして遊びました。
12. 12月
いよいよ寒さが厳しくなってくると、そろそろ土の中での生活の準備をしなくてはいけません。 「外の世界ともしばらくお別れだね。」と2ひきは、今年の記念に穴の周りを飾りつけることにしました。 地面に木の枝をさして、へびくんの拾ってきたきれいな玉がついているひもを巻きました。 そして、最後にへびくんの宝物のきらきら光った星を、木の枝のてっぺんにつけました。きらきら輝く星は寒い冬をぱっと暖かくしてくれるように感じました。 2ひきは、しばらく星を眺めると、寒さに耐えきれず土の中へと入っていきました。 暖かい季節を待ちわびながら、2ひきはしばらく土の中で暮らすのでした。それまでみんなともお別れです。また会えるといいですね。